まぁ、つまらないものですが

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読書感想文「ライティングの哲学」

タイトルから「執筆(ライティング)とはこうあるべき」みたいな本だと思って購入したのですが、いい意味で想像の斜め上の本だったので、ツラツラと書いていこうと思います。

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この本の構成

通常、文章術の本は、こうでなければちゃんとしていない、というふうに規範を示すもの、こうではダメああではダメと凹凸を削って整えるような指導をしてくる。それに対して本書は、全く逆を行く。チマチマした「べき」を気にせず書いてしまえ、出てくるものを出てくるままに書いてしまえ、という方向に励まし合ったのである。 ——「あとがき」より抜粋

まず内容の構成がすでに変わっていて、4人のライターの執筆に対する愚痴とあるあるネタについて話した、座談会の文字起こし原稿をベースになっています。 構成としては前半は、執筆についてのあるあるネタをもとに話す座談会「挫折と苦しみの執筆論」この座談会後にどのように執筆が変わったかを各々が記事形式でかきあげた「執筆実践」そして、その記事をお互い読んだ上で座談会から3年の間に”挫折”と”苦しみ”を乗り越えたのかを語る座談会「快方と解放への執筆論」という3部構成になっています。
これは本書というより星海社新書の特徴ですが、行間をゆったりととっており、文字も他社の新書と比べ大きく読みやすいので移動中とかでも読みやすくておすすめです。まぁKindle版は関係ありませんが…… その中で自分がお見終わった後に印象に残ったところをいくつかご紹介したいと思います。

アウトラインから始める

最初の座談会のきっかけは一つのアウトライナー(箇条書きに特化したテキストエディッタ)の使い方の意見を交わすことですた。 その時、各々なぜアウトライナーで最初に全体像を書くのかという話をしていました。もちろん理由は人それぞれで、ワードだと見た目など気にすることが増えて進まないことだったり、ある種の制約を強いることでアイディア出しをスムーズしたりなどでした。 ただ共通していることとして、まずはアウトラインを完成させることを目指すと、いう点です。
いきなりキレイな文章を目指すと心が折れてしまったり、アイディアがでなくなってしまったり、様々な落とし穴を避けるためにまずは散文でも良いから全体像を描く行為が大事なんだと言うことを改めて再確認しました。

執筆をしない執筆

今回の座談会メンバーである瀬下氏の「できない執筆、まとめる原稿——汚いメモに囲まれて」という執筆技法の記事で、書かれている内容が自分にとってかなり印象深い記事でした。
最近ではタイプせずに音声入力で記事を書いてく人がいますが、瀬下氏の方法はもう少しタイプする行為から離れています。
エディタを閉じてツイキャスやDiscordに逃げて独白でも議論でもいいから情報を脳の外から出してあげる。普段から何気ないことをメモしたりボイスメモを残す。そうして脳の外へ出てきた情報のを編集することによって原稿を生み出すと、いう方法は自分が今まで考えたことがなかった方法でした。これは編集者の肩書も持つ瀬下氏だからこそという部分もありますが、誰でもお試ししやすい技法だと思います。同人誌でもなかなか進まないときなどにちょっと試してみたいなと思っています。

よくある執筆論 = マナー

この本により心が惹きつけられた部分です。
執筆論というのは「こうしてはだめ」や「こうであるべき」みたいな論調で進む本がだいたいです。そんな中で、そんなものに囚われてしまっては書きたいものもかけない、良いじゃないか散文で、完璧を目指す必要なんて無いと執筆の苦しみに寄り添ってもしくは自分の傷をえぐりながら等身大の執筆論を書かれているなと感じます。
また、添削によって組み替えられた文章は何かしらを失っている、という話も興味深いです。
完全食を比喩にしつつ「そもそも食べ物が持つ栄養素は100%分析できているわけないのに、それを再構成できているとするのは人間の傲慢だ」という話はなるほどと思うところがあります。

断念する技術

「完全を生み出すことを諦めることが最高の執筆術である」というのはそのとおりだが、それを堂々と書かれていて、更には数ページに渡ってどうやったら断念できるか?について心情のせめぎ合いについて書かれています。 自分に置いても同人誌という無限に締め切を伸ばせる環境下でいかに断念を作り出せるのか?は一番の課題であり、コロナ禍でイベントが開催現状一番むずかしいことなんだろうなと思います。 また読書猿さんの最後の一文がなかなかに良い。

これは自分の可能性についての断念ではない。有限の時間と能力しか持たない我々が、誰かに押し付けられたわけではない自分に対する義務を果たそうという決断である。  —— 「断念の文章術」読書猿

最後に

思いの外なかなかの分量になった気がする。
そんな感じで本書おすすめです。 https://amzn.to/3sLiUxv

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  • 友人氏の技術ブログ 数学ガチ勢がエンジニアになっていく奮闘記